戦前の女性歌人、岡本かの子が、ノーベル賞作家、川端康成にあてた未公開の書簡が発見され、茨城県近代美術館(水戸市)の「川端康成コレクション展−文豪が愛した美の世界−」で公開されている。美術品愛好家としての顔もある川端の所蔵作品を集めた企画展で、国宝を含む絵画、彫刻などの美術品が展示されているほか、岡本や菊池寛、太宰治ら文豪とやりとりした書簡など貴重な資料も数多く紹介されている。(城野崇)
同展で展示されている岡本の手紙やはがきなどの書簡は85点のうち60点が初公開。神奈川県鎌倉市の川端邸に保管されていた。
川端は文芸誌「文学界」に岡本の推薦文を掲載、歌人として活躍していた岡本の文壇登場を後押ししており、2人の関係をひもとく貴重な資料とみられる。
今回の企画展に合わせ、川端の遺品を管理している「川端康成記念会」が文学者との交流を裏付ける資料を改めて調査したところ、発見されたという。
記念会では今後、今回発見された岡本の書簡の内容を調査するが、同展プロデューサー、水原園博さん(62)は「解読されれば川端と文豪らとの親交を知る上で大変有用」と強調する。
記念会では平成14年から各地で「川端康成コレクション展」を開催しており、今回が15回目。川端邸を整理するごとに新たな作品や資料が“発掘”されるという。
今回は「文学者との交流」をテーマにしており、岡本のほか菊池、太宰、三島由紀夫、横光利一、林芙美子、瀬戸内寂聴の書簡を公開。太宰が芥川賞選考委員だった川端に対し、「私を見殺しにしないで下さい」などと書いた4メートル以上ある手紙なども展示されている。
川端は、東山魁夷や尾形光琳ら著名な芸術家の作品100点以上を所蔵し、コレクターとしても名高い存在だった。記念会は純文学を読まない層にもコレクションを通じて川端を知ってもらいたいと、「美術と文学の融合」をテーマにコレクション展を各地で開催している。通常の美術展とは違い、解説の代わりに川端が作品について記した文章などを添えている。
6月6日まで。午前9時半〜午後5時。月曜休館(5月3日開館、6日休館)。
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【プロフィル】川端康成
1899〜1972年 戦前、戦後、文壇の第一人者として活躍した作家。「伊豆の踊子」「雪国」など日本の美を表現した作品を発表し、昭和43年に日本人として初めてノーベル文学賞を受賞した。
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【プロフィル】岡本かの子
1889〜1939年 大正、昭和初期に歌人として活躍し、晩年は芥川龍之介をモデルにした「鶴は病みき」など小説も発表。芸術家、岡本太郎の母。
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